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『火花』又吉直樹 笑いを追求するお笑い芸人のリアルを描いた作品

お笑い芸人って面白いですよね?僕は漫才やコントを見てよく元気を貰っています。

お笑い芸人の面白さは才能か努力かどっちでしょうか?

僕はいずれにしても人を笑わせることが好きという才能は持ち合わせていると思います。

特に人間の恥ずかしい所や不合理に対して視点を変えて笑いにする才能は多くの人が救われるでしょう。

なので、僕はお笑い芸人を尊敬してます。笑って元気を貰うだけではなく勇気を貰ったりもします。

今回はそんなお笑い芸人が芥川賞を受賞したという話題作「火花」を紹介していきます!!

あらすじ

売れない芸人の徳永は、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。

神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。

笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。

第153回芥川賞受賞作。

映画もおすすめ!

 

感想。以下ネタバレ注意

現役お笑い芸人だからこそ書けるようなお笑いの世界の裏側はお笑い芸人の楽しいイメージだけではなくて現実の厳しさも感じました。

普段、テレビで見ているお笑い芸人はほんの一部の売れっ子だけというのが現実です。

その中でお笑い芸人をやっている理由や想いが芸人の数だけあってその生き様がすごくかっこいいなと思いました。

お笑いをひたすら追求してただ面白いってだけではなくてお笑いとは何か?というような本質的なことも考えるところで飲み屋で議論してるシーンが好きでした。

実際のお笑い芸人が飲む時がこんな感じだとしたら面白いですね~。又吉先生はこんな感じなのでしょうか。

 

面白かったシーンを抜粋して紹介

❝ 一つだけの基準を持って何かを測ろうとすると目が眩んでまうねん。❝p40抜粋

これは神谷さんが「なんでも過度がいいねん。大人に怒られなあかんねん」と言うシーンでその発想が月並みな不良という評価をした徳永に神谷さんが語った言葉である。

月並みという平凡さを否定すると非凡アピールに成り下がり反対に、新しいものを端から否定すると技術アピールに成り下がる。

そして、両方をバランスよく取り入れたものだけを良しとするとバランス大会に成り下がる。

一つだけの基準をもって何かを測ろうとすると目が眩んでしまう。

僕は、この考え方がすごくその通りだなと思った。

こうあるべきとか、これはこうしなくてはならない、とかそういう考えは狭い視野になってしまって物事の本質からずれてしまう恐れがあるんじゃないかと思う。

確かに、基準を作ることで分かりやすくなるし基準をもとに明確な判断ができるかもしれないけどことお笑いに関しては正解のない分野だしお笑いに関しての基準というのは

面白さの基準ではなくて基準という名前のひとつのツールなのではないでしょうか。

例えば、笑いの要素として予想を裏切るとかあるけど基準をあらかじめ作っておいてそれを裏切ることによる笑いみたいな・・・お笑いというものは正解がない分、無限の可能性がありとても奥が深いなと思います。

 

”笑われたらあかん、笑わさなあかん”p58抜粋

たまにお笑い芸人が言ってる言葉ではないでしょうか?

今まではお客さんが「あの人阿保やなぁ」って何も考えずに見ていたことが多かったようです。

しかし、今だと阿保なふりしてることがバレている、笑かされてるって気付くことで笑われるふりができなくなるとお笑い芸人としてはよくないと言っています。

本書ではだからこそ新しい基準が生まれるかもしれないとありますがお笑いの世界も常に変化し続けるんでしょう。

お笑いという分野が無くなることはないとは思いますが一発ギャグとかリズムネタとかその時代での流行り廃りは確実にあるでしょう。

 

”面白いかどうか以外の尺度に捉われるな”p76抜粋

面白いことを言うためであれば暴力的なことも性的な表現も辞さない覚悟をもっている神谷さんに対して、徳永は自身の発言によって誰かが傷付くこと、誤解を生むことを恐れている。

それを神谷さんは不真面目、不良だと言う。

徳永は面白い下ネタを避ける時面白い人間であるよりもせこくない人間でありたいという意識が勝ってしまうらしい。

面白さを追求した芸人ならではの言葉だとは思います。

世間の視点だと下ネタも暴力的な発言もイメージが悪く、ネタで発言をしても世間は本気に受け取る可能性もあります。

お笑い芸人という大勢の人を相手にしてる仕事ならプロとして最低限のモラルを持った行動は必要でしょう。

ちなみに最後の方で神谷さんが性的な体をはったギャグをして世間を無視することはできないんですよって徳永に怒られてます(笑)

 

 ”気づいているか、いないかだけで、人間はみんな漫才師である”

人間はペルソナという仮面をつけて生きているという話がある。

どういうことかというと友達に見せる顔と上司や先生に見せる顔。親、恋人に見せる顔はそれぞれ違いそれを人は無意識あるいは意識的に使い分けているということである。

つまり人はその状況に合わせて自分の役割を演じているわけです。

この話と何となく似ているなって思いました。

自分の役割を演じているのって言い換えれば状況によってはみんな漫才師を演じてしまう瞬間があるのかもしれません。

 

 ”「大丈文庫」という謎の言葉は、相手に反論をしても無駄であるという徒労感を与えるのにはうってつけの言葉だった。”

この意味不明だけども何故か語呂が良い感じに聞こえる言葉文庫でう〇こを連想した僕は小学生並みの発想力なんでしょうか。

くだらない言葉遊びを物凄く冷静に分析している感じ好きです(笑)

 

”自分が考えたことで誰も笑わない恐怖を、自分で考えたことで誰かが笑う喜びを経験してほしいのだ。”

お笑い芸人かムードメーカー的な存在ではない限り人を笑わせようと意識しながらしゃべることなんてなかなかないと思いますが・・・。

でも笑わせようと意識して言ったことが滑る時の恥ずかしさは半端ないと思います。

その場の空気感とかも大事だとは思いますがアウェーの中から空気感を変えれる人はすごいですよね。

 

”一度しかない人生において、結果が全く出ないかもしれないことに挑戦するのは怖いだろう。

無駄なことを排除するということは、危険を回避するということだ。

臆病でも、勘違いでも、救いようのない馬鹿でもいい、リスクだらけの舞台に立ち、常識を覆すことに全力で挑める者だけが漫才師になれるのだ。”

僕はこの言葉とても好きです。

何かを得ようとしたらそれなりのリスクはついて回ることを覚悟しなくてはならないっていうのは分かるんですが人はリスクを避けがちです。

見えないもの、経験のないものには、不安がつきまとうからです。

ではどうすれば不安を無くすことができるのかそれは経験していく中で徐々に無くなっていくんだと思います。

人生に必要なものは勇気と想像力とほんの少しのお金とかのチャップリンも言っています。リスクの先にある希望を想像して勇気をだせば挑戦していけるかもしれません。

これは漫才師に限らないと僕は思います。

又吉先生は良い意味でお笑い芸人っぽくない深いことをおっしゃいます。いえむしろお笑い芸人だからこその生きた言葉なのかもしれないですね。

 

”僕たちは世間を完全に無視することはできないんです。世間を無視することは、人に優しくないことなんです。それはほとんど面白くないことと同義なんです”

これは先ほども言いましたが神谷さんがデリケートなテーマを悪ふざけでお笑いにしようとしてまじで怒られるところです。

テレビで仕事をする有名人?は特に気を付けなくてはならないでしょう。

ただこれはデリケートな問題だけではなく、人の商売は人を相手にしていることがほとんどなので相手の事をいかに考えられるかが重要だと言うことが分かりますね。

 

最後に…

 お笑い芸人の書いた小説とは思えないくらい表現が豊かな小説だなと思います。

もちろん、お笑い芸人さんは僕なんかより語彙力豊富だろうし、表現力豊かだとは思うんですが、表現の仕方が純文学っぽいなと感じました。

冒頭からして表現力がすごくて情景が目に浮かぶようでした。

ただ表現力が豊かすぎて難しい言葉も多かったです(笑)

でもページ数も少ないのでサクッと読めるかなと思います。

そして映画も是非見て欲しいですね!

スパークスの解散ライブ、菅田将暉の演技がまじですごいです。それだけでも観る価値あります。

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