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悲しみよこんにちは/フランソワーズ・サガン 繊細に描かれる少女の心情

悲しみよこんにちは』はフランスの小説家フランソワーズ・サガンの小説。

彼女が18歳の時に出版した処女作。

 

何の宣伝も無しに出版したにもかかわらず一年後には部数が百万部を超え、25か国で翻訳され世界中で読まれた。さらにハリウッドで映画化もされヒットしその際にヒロインの髪型を真似て「シルカット」というのが流行った。

 

あらすじ

 主人公のセシルはもうすぐ18歳。

プレイボーイ肌の父レイモンとその恋人エルザと南仏の海辺の別荘でヴァカンスを過ごすことになる。そこで大学生のシリルとの恋も芽生えるが、父のもうひとりのガールフレンドであるアンヌが合流。

父が彼女との再婚に走り始めたことを察知したセシルは、葛藤の末にある計画を思いつき実行に移すが・・・。

 

 

感想。ネタバレあり

タイトルの『悲しみよこんにちは』というのを見てとても感傷的な小説なんだろうと思いました。

悲しみという抽象的な概念に対してこんにちはという現実的な言葉を投げかけておりサガンの非凡さがタイトルににじみ出ていて古本屋で見かけた際にはとても興味を惹かれてとても読みたくなりました。

 

ちなみにタイトルはポール・エリュアールの詩からきているそうです。

 小説の初めに紹介されています。

❝悲しみよ さようなら 

悲しみよ こんにちは 

おまえは天井のすじにも刻まれている 

ぼくが愛する瞳のなかにも刻まれている 

おまえはみじめさというわけではない

このうえなく貧しいくちびるにも 

お前は浮かぶのだから ほほえみとなって 

悲しみよ こんにちは 快い肉体を重ねる愛

その愛の力 いとしさは突然 

体のない怪物のようにわきあがる

望みを失った顔

悲しみ 美しい相貌よ❞

 ポール・エリュアール『今ここにある生』より引用

 

とても魅力的な詩で美しさすら感じます。

悲しみという気持ちひとつでここまで表現できるなんてよほど洗練された感性があるんでしょう。

 

 登場人物がそれぞれ個性的で父レイモンの恋人エルザとアンヌは対照的な存在として描かれています。

エルザは若くて明るく可愛らしいがいい意味でも少しばかみたいな感じでアンヌは理知的で聡明な美しい女性。父レイモンはプレイボーイ肌の自由奔放な性格。

 

その父がアンヌとよりを戻そうとするのをセシルが止めようと奮闘するんですが若さ故の反骨精神が表れていて自由を求める心は十代ならきっと共感できるだろうと思います。

 特に印象的なシーンを紹介だったのは友人に誘われて行ったバーの翌日の会話でした。

父レイモンと友人が話していた様子を男同士であの子とできたとかそういった狩りのような感覚で話す十代の男の子みたいな話題でもふたりとも胸を躍らせていて感じが良くみえる。悲しい打ち明け話でさえそうだ。

あけすけで、情けない面もあるが、そこには熱いものがある。アルコールのグラスを前に、互いに心を許しているふたりの男には❞本書146p引用

とあって。

一方、アンヌの友人たちは対照的で

❝アンヌの物静かさや、超然としたところ、ひかえめなところは、わたしの息をつまらせる。❞本書146p引用

とアンヌに対して思うところがある感じです。

 

ウェッブ夫妻とデュピュイ夫妻の会話を楽しいかアンヌが聞きますがたいていはうんざりだけどおもしろいと答えます。

❝「あの人たちの会話がどんなに単調か、それで・・・なんて言ったらいいのかしら・・・うっとうしいか、あなたには全然わからないのね。仕事の契約とか、女の子とか、パーティーとか、ああいう話、退屈に思ったことはない?」

「ねえ、わたし、修道院の女子校に十年もいたから、あの人たち行いの悪さがいまだに新鮮なのよ」

気に入ってるのよ、とはさすがに言い足せなかった。❞本書p148引用

とやはりアンヌの考えは理解できないようで

 

❝「ウェッブみたいな男の人たちが、最後はどうなるか知ってる?」

わたしは心のなかで、〈父もよね〉と思った。そして陽気に答えた。

「みじめに終わるんでしょ」

「ああいう人でも魅力がなくなって、いわゆる『元気』も失ってしまう年がくるのよ。お酒も飲めなくなって、それでもまだ女のことを考えてるの。あとは女たちにお金を払うしかなくなり、孤独から逃げるにも、ちょっとした妥協をたくさん受け入れなきゃならなくなる。だまされ、不幸になる。それで、気むずかしく感傷的になっていく・・・そんなふうに落ちぶれてしまった人を、私はたくさん見てきたの」❞本書p150引用

とアンヌがセシルに対して教えるように言っていました。

若いからといって後先考えずにいるのは良くないと分かってはいてもどうも自分事として捕えきれず何とかなるだろうと思ってしまう所はあるなと感じました。

今を楽しく生きてさえいれば最低限いいんじゃないかなとも思います。

もしも夢があるなら別でしょうけども。

 

セシルはその際は確かに納得してはいましたがやはり煮え切らないところがあるようで

❝父とわたしにとって、内面の平穏を保つには、外部の喧騒が必要なのだ。そしてそれを、アンヌは認めることができない。❞本書p153引用

と考えの不一致が明確に伝わります。

 

よく人は大きく分けて内向的か外向的かで区別されますがアンヌが内向的で父レイモンが外向的なのかなと思いました。

個人的にはセシルも内向的なんじゃないかなと思っていたんですがこの一文からは外向的なタイプのような感じでしたね。

 

 

セシルがアンヌと父レイモンの仲を裂くような計画を考えて色々やっていく中でセシルがアンヌに対して心を許しはじめたかなと思ったところでセシルの計画が思いのほか?うまくいってしまい、アンヌは珍しく感情を露わにして飛び出してしまいます。

そこでセシルと父レイモンは虚しさを感じて手紙を書こうと手紙を出します。

しかしアンヌは飛び出した日の帰り道で事故にあい亡くなってしまう。

 それが偶然によるものなのかアンヌの自暴自棄によるものなのかわかりませんが名状しがたい悲しさとか虚しさを感じました。

作品ではそれに悲しみよこんにちはと言っています。

 

最後に・・・

 フランソワーズ・サガンの小説を読むのは初めてでしたが文体のセンスのよさに驚愕しました。少女セシルの感受性の強さから様々な思いを巡らせるのですがその心理描写がとても良く伝わってきました。

情景とかも美しく描かれていて言葉のひとつひとつが美しく感じるそんな小説でした。

 

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