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コンビニ人間/村田沙耶香 変わり者の生きづらさを感じた

コンビニ人間」は第155回 (2016年) 芥川賞受賞作。

9月4日に文庫化され

衝撃の話題作とやらを読んでみました。

あらすじ

 主人公は大学時代からはじめたコンビニのアルバイトを

36歳まで続けたコンビニバイト歴18年の中年女性。

彼氏無し、日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、

「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。

ある日、婚活目的の新入り男性がやってくるが・・・

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感想。以下ネタバレ

主人公は変わり者 

主人公の古倉は子供の頃から変わっていて

皆が理解できるようなことで

分からないことが多々ありました。

例えば、青い小鳥が死んでいるのを見つけた時に

周りの子供は泣いて悲しんでいましたが、

古倉は亡骸を抱え母親の所まで持っていき

焼き鳥にしようと言い出します。

母親は驚きつつ埋めてあげようと言いますが

小鳥を埋葬する為に花を添える姿が古倉には

花を殺して小鳥さん可哀想と言っているようで

理解できないと感じます。

これだけ見ると全ての生き物に敬意を持って

接しているのかなと思いましたが

他にも、喧嘩している男子生徒に

周囲が止めてと言ったのでスコップで殴って

動きを止めるという行動をします。

言葉の真意が分からずそのままに

受け取ってしまうかもしれないですね。

やっと見つけた居場所

そんな幼少期を過ごした古倉は

両親に迷惑がかかっていることを自覚し

普通を演じることも分からないので

必要最低限のことしか口をきかなくなります。

このままでは社会で困ると心配し始めますが

ある日コンビニのバイトを始めると

マニュアルがある作業は得意らしく

古倉は難なく適応します。

この時、古倉はこう思います。

「私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。

私は、今、自分が生まれたと思った。

世界の正常な部品としての私が、この日、確かに誕生したのだった。」

今まで異常されていたがやっと居場所を見つけた感じです。

僕もこの気持ちは何となく分かるかもしれないです。

何の役にも立っていないと感じるとそれだけで卑下してしまうような

やっぱり誰かに必要とされることは生きがいになり

居場所を見つけることは人生の目標のひとつになると思います。

18年変わらずバイトする主人公

両親もこの時は、バイトを始めることで

社会と繋がった古倉にほっとしますが

18年何の変化もなくコンビニのバイトを続ける様子に困惑します。

古倉はコンビニのバイトでコミュニケーションを取ることで

話し方を吸収し、真似することで普通を演じますが

そういう処世術的なところが、何となく共感できました。

初めは誰でも真似から入るものだと思うので。

でも古倉の変わったところは真似を忠実にやりすぎる

ことじゃないですかね。

だから雰囲気が急に変わったとか言われるのかと。

それに古倉は小説を通してずっと無機質な印象を感じました。

セリフが淡々としすぎていて

まるでアンドロイドのような感情が無いように見えました。

行動原理も合理性を重視するのが目立ってましたし

常に冷静であり怒りとは無縁と言っていたことから

自分の中の判断基準は無いかもしれないですね。

でも18年も飽きもせず手を抜かずにやり続けるのは

中々すごいことだと思います。

何かもっと活かせる職業もありそうですが。

変化が訪れるが・・・

そんな中、白羽という婚活目的の男性が

新入りバイトとしてやってきましたが

コンビニバイトを見下した様子で勤務態度も悪く

しまいにはお客様にストーカー行為をして辞めさせられます。

辞めさせられても懲りずにコンビニにやってきた白羽を

古倉が見つけてとりあえずファミレスへ連れていきます。

婚活目的の白羽と独身の古倉は

同棲することでウィンウィンだということになり

形だけ同棲することに。

古倉は何故結婚しないのかと何度も聞かれています。

周囲は結婚してる人ばかりで

その歳で結婚していない人は

異常だという雰囲気がありました。

結婚しないならそれなりの理由が

あるだろうと考えるのが人間です。

でも古倉は結婚しない理由も無いので

ただ気味悪がられています。

要するに異常者だから結婚できないと

こっち側の人間ではなく

あっち側の人間だと差別されるぎりぎりの所で

白羽が現れたので形だけ彼氏にすると

周囲は大騒ぎになります。

人間はあっち側だと分かったら冷たいですからね。

まるで別の生き物を見るかのような

目をされるんじゃないでしょうか。

特に一人で行動することが

異常とされる風潮があるような気がします。

最近だとおひとりさまで楽しむ焼肉だとか

カラオケだとか増えてきていますがやっぱり

一人で行ってきたと言うと不思議な顔をされる気がします。

何かそれなりの理由があれば納得すると思いますが

僕は理由なんて無くとも、別に良いと思いますけどね。

多様化が進んでる現代社会とは言いつつも

まだまだ差別的なところが無くなること無いでしょうし

自分らしく生きてくことが大事だと思います。

白羽からコンビニのバイトを辞めさせられ

就職の面接へこぎ着けたが面接へ向かう途中

コンビニに寄るとコンビニの声が聞こえると言い

古倉は結局、コンビニが天職だと

コンビニバイトに戻ってしまいます。

この終わり方をハッピーエンドと取るかどうかは

微妙なところですが、

このままずーっとコンビニバイトで終わるとしたら

少し寂しい気がします。

最後に

初めはコンビニのバイトでも誇りを持って

人生生きてるんだみたいな小説かと思ってましたが

主人公が変わり者のそういう人たちの

生きづらさを描いた小説で意外と重いなぁと思いました。

社会に属している限り世間の普通があると思うので

普通って何か考えさせられる作品でした。

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