読後感が最悪と名高い貴志祐介のホラー小説である「天使の囀り」を読みました。
読後感は最悪だけど衝撃的で面白いとされているのでいつか読みたいと思っていた小説です。
しかし、読後に影響受けすぎて仕事どころではなくなるのではないかと敬遠していました…。
ですが新世界よりを読んで貴志祐介のファンとなった今では躊躇なく読めます！
天使の囀りを聴いた人々が不可解な行動をして自殺を遂げていきますが真相に迫っていくほど、おぞましく人によってはひどく嫌悪感や怖さを感じるかもしれません。
あらすじ
主人公はホスピスで終末期医療に携わる精神科医の女性。
作家の恋人がいたが病的に死ぬことを恐れる。
しかし、アマゾン調査隊に参加してからは人格がまるで変ってしまう。
元々内向的なタイプの性格ががらりと変わって明るくなり食欲、性欲が旺盛になりあまりの豹変ぶりに彼女は心配する。
さらにあれほど怖れていた「死」に魅せられたようになり天使の囀りが聴こえると言い残し自殺。
さらに他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。
一人は病的なまでに猫科の動物を恐れていたがサファリパークで虎に身を捧げて自殺。
もう一人は乳幼児突然死症候群(ＳＩＤＳ)で長男を亡くし鬱にまでなったが何とか立ち直り長女を授かったが、何よりも失うのを恐れるはずの娘と無理心中してしまう。
アマゾンでいったい何があったのか主人公が調査していく・・・
感想。以下ネタバレ注意
読み終わった感想はとにかく えぐかったです…。
この小説はホラーに分類されてるようですがジャンルが分かりにくいです。
はじめは超自然的なホラーにも見えますが読み進めていくとウイルスによるバイオホラーか幻覚物資によるものかあるいは単なるサスペンスなのか…。その辺を推理しながら読むのも面白いかもしれません。
ネタバレをすると、寄生虫が人間の脳を乗っ取るという一番、気味が悪いもので生理的嫌悪感がすごいです。人によってはしばらく食事が純粋に楽しめないかもしれません…。
しかし、ありそうで無い、リアリティーのあるSF作品を書くのが上手だなぁと思います。
現実にも寄生虫が宿主の行動をコントロールする現象はあるみたいなので、もしかしたら地球上、あるいは宇宙のどこかに人間を操ってしまう寄生虫がいるのかもしれませんね。
この寄生虫は恐怖を快感へ変えるという性質を持っており、メリットしかないじゃんと最初は思いましたが恐怖心が強い人間ほど快感も強くなり、やがて行き過ぎた行動により自殺してしまうのでとても恐ろしいです。
では恐怖心を普段あまり感じない人とか恐怖を向精神薬とかでコントロールできれば自殺しないしストレスフリーで最強じゃん！となりそうですが寄生された後、自殺しないで生き続けるとさらに恐ろしいことになります。
寄生された生物の末路はおぞましい第四段階の変容をみせる
寄生された生物つまり寄生された人間は寄生虫により遺伝子を操作されていきます。そして寄生虫により段階ごとに変容を見せます。
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第一段階～気分爽快になり食欲と性欲が旺盛になる
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第二段階～爽快感は病的なまでに亢進する。
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第三段階～多幸症を越して一種の無感動状態となる。
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第四段階～体内で無造作に増え続けた寄生虫により手足を衰退させ、胴体を袋状にした寄生虫の食料兼住宅の為だけの存在になる
寄生された最後を知らないが故に起こしてしまった悲惨な結末
物語では恐怖心(寄生されたら快感？)をコントロールできた蜷川教授という人物がセミナーを開き人類の選別という名目で無作為に寄生虫に感染させていきます。
本人自ら救世主コンプレックスと公言する人物なのでたちが悪い人間です。
元々、ネットのチャットオフ会から始まるセミナーで何らかの辛い過去を持った精神的に疲れている人が多く集まるので感染した多くの人はおそらく快感に負けて自殺したと思います。
ですが、運良くなのか運悪くなのか、生き残れた人達が少なからずいて第四段階に突入してしまいます。そして見るも耐えない無惨な状態になってしまいます。
蜷川教授も第四段階まであることを知らなかったのでしょう。
知らなかったとはいえ、まるで地獄のような光景を作りだしてしまった蜷川教授の罪は重いでしょう…。
天使の囀りは何故起こるのか？
この寄生虫はアマゾンに分布する個体でブラジル脳線虫と名付けられ、通常は猿に寄生して猛獣や猛禽類に捕食されるように行動操作します。
猿にとっては[猛禽類の羽ばたく音＝恐怖の音］なので猛禽類が羽ばたく音が聞こえたら反射的に逃げだすくらいに恐怖を感じます。
なので、初めは羽音がする程度で徐々に慣らしていき羽音に対して恐怖ではなく快感を感じるようにコントロールしていくという恐ろしい原理です。
人間は猛禽類の羽ばたきを普段聞くことが無いので天使の羽ばたく音(囀り)に聞こえるのでしょう。
ちなみに本書でもでてきますが天使の羽根って鷲の翼をモチーフにしてるようです。
もっと可愛らしいものかと思ってましたがなかなか、いかつい翼をお持ちのようです(笑)
所々、神話の話がでてきたんですが神話とか読んでみるのも面白いかもしれないですね～。
最後に…
読後感が最悪とありましたが僕は割とすんなり読めました。
グロ系は比較的大丈夫だからでしょうか。
確かに群を抜いて気持ち悪さ、特に生理的嫌悪感が感じれる小説でしたがそれを上回る面白さがあったのでとても読みやすかったです。しかし、人によっては苦手な方もいると思うので最低でも虫とか大丈夫じゃないと読むのがきついかもしれません。
でも主人公の早苗は報われないですね。
最愛の人を無くし、独自に調査を進めていく中で新しい人と良い感じなっていくのですが、寄生虫によって亡くなってしまいます…。
最後に寄生虫を終末期患者に使用してましたが警察へ出頭するためなのか優しさからか、あるいはどちらもなのでしょうか…。早苗の優しさを感じて切なくなりました。
登場人物はほとんど寄生虫によって死んでしまうのでハッピーエンドとはいえないですがホラー小説にハッピーエンドなんて求めてはダメですよね(笑)
最後に一人残った早苗が何だか可哀想で辛いですが前向きに生きて欲しいですね。
もし、僕がこんな体験をしたらトラウマで精神がブレイクすること間違いないです。
この小説を読んだらしばらくは麺とかなま物は遠慮したいですね…。
ですがホラー小説としての面白さは間違いないのでおすすめです！
