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小説『新世界より』感想、あらすじ。名作と言われるだけあって面白い

SFの名作小説と言われる貴志祐介の「新世界より」をお盆休みに読みました。

文庫版で上中下巻からなる1000ページ超えの長編でしたが

展開が面白く一気に読めました!

 

あらすじ

1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖66町には純粋無垢な子供たちの歓声が響く。周囲に注連縄で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。サイコキネシス(念動力)の技を磨く子供たちは野心と希望に燃えていた・・・隠された先史文明の一端を知るまでは。

超能力は実在するのか?

念動力、いわゆる超能力はひと昔前にユリゲラーオウム真理教等、流行ったようですが時代が進むにつれてトリックであることがほとんどだと検証されてきました。

人間は思い込みしやすい生き物なので科学で説明のつかない現象が起きるとオカルトに結び付けようとします。その結果、八百万の神々が誕生したのではないでしょうか。

科学で説明がつけば偽物、つかなければその時点では本物です。

僕自身、「超能力あったらいいなぁ~」と思いますし、頑張って修得できるものなら修得したいです(笑)

超能力は色々な種類がある

  • サイコキネシス(念動力)
  •  パイロキネシス(発火能力)
  •  テレパシー
  •  未来予知
  •  テレポーテーション
  •  透視

上げだしたらきりがないですが現在も科学では説明のつかない超能力、もしくはペテン師が世界に蔓延っています。

もしも超能力が日常化したら?

新世界よりでは呪力と言われる念動力が当たり前のように使われており、呪力をうまく使えるように学校で学んでいく様子は、ファンタジーのような感じもしました。

あらすじから千年後の日本とありますが自然に囲まれた集落、注連縄で囲まれた町とまるで今と変わらないような風景は現代文明の影を感じさせず、文明は逆行しているのでよく考えると違和感を覚えます。

なぜ現代文明は無くなったのか?

隠された先史文明の謎と千年の間に何があったのか?

読み進めていくと段々と明らかになっていく真実に驚かされます。

超能力が日常化したら世界はどうなっていくのかをリアルに描かれており呪力のある世界観に引き込まれました。

僕が今まで読んだSFの中では最高です。

感想 ネタバレあり

物語前半は平和な村の少年少女の冒険活劇が繰り広げられる

子供たちに悪鬼や業魔という怖い怪物のことを童話のように話されていますが事実も入っているであろう雰囲気でどことなく恐怖心が煽られます。

でも悪鬼や業魔が、早く出てこないかな~と気になり序盤から引き込まれました。

他にも子供たちの中での怪談話で不浄猫や風船犬の存在等、まるで都市伝説の口裂け女のような怖さ半分、見たさ半分という絶妙な話が面白いです。しかも、ストーリーと関係があるので設定がしっかりと作りこまれてます。

とにかく前半では新世界の世界観を少しずつ知り、新世界の住民になったような気分になります。

物語は夏季キャンプでミノシロモドキと出会ったことで急変します。

ミノシロモドキとは移動式図書館のことです。

正式名称はPanasonic 自走型アーカイブ・自律進化バージョンSE-778HΛです。

「日本昔話みたいで面白いな~」とか思ってたら急に近現代のSF作品がこんにちはしてくるので脳の処理が追いつきません…。

タイムラグの後、「千年後の日本だったな…そりゃPanasonicも進化するわな」と冷静さを取り戻します(笑)

この移動式図書館によって大人から隠されてきた真実を知ります。

人間が呪力を悪用し大量虐殺が何度も行われたことや、呪力を持った人間が呪力を持たない人間に対し奴隷のような扱いをしてきたこと等、とても凄惨な歴史に今までのほのぼのとした雰囲気が一変します。

もしかしたら瞬が業魔になってしまったのもこのタイミングで徐々に精神を蝕んでいたのかなと思います。

新世界では悪鬼や業魔がでないように徹底した管理をする為に、時代が逆行しています。

攻撃抑制と愧死機構というある条件で発動するトリガーを遺伝子に組み込ませて、学校教育と通過儀礼によりトリガーの暗示を強化しています。

つまり、早紀達は人間は人間に対して攻撃することは考えられないように暗示をかけられているのです。

その状態で人間同士の争いの話を聞くと早紀達にとっては本能レベルで理解できずに、今までの倫理観が覆されかねない事実なので精神的ショックが想像を絶すると思います。

攻撃抑制

同族に対する攻撃衝動を抑えるものです。

愧死機構

攻撃抑制を無視して人間に攻撃しようとすると無意識に呪力が発動し

眩暈や動悸等の警告発作が起きます。

それでも無視して攻撃すると呪力により自殺することになるようです。

瞬が業魔になった原因とは?

  1. ミノシロモドキによる先史文明の歴史を聞かされた
  2. 封印された呪力を意識がはっきりしている状態で行った
  3. そもそも呪力が強すぎた&聡明な性格から色々な物が見えすぎる

この3点だと考えられますがはっきりとした原因は分かりません。

卵を呪力で孵化させる課題で呪力の無意識な漏出により、雛が奇形になってしまったことから業魔化が大人達にばれてしまいます。

ちなみに呪力の無意識な漏出は誰にでも起こりえることですが、普通は注連縄で囲まれた外の世界に向けるように無意識化に意識づけられている為、瞬のようなことはありえないのです。

早紀と瞬はだんだん良い雰囲気になってくるのですが(実はずっと両想いだったようですが)お互いに気持ちを伝えれた時にはもう業魔化が進んでおりどうしようもない現実になんだか切なくなりましたね。

徹底管理された新世界では、瞬がいなくなるとすぐにその存在を思い出せなくなるよう、暗示をかけて存在を抹消します。

しかし、瞬との絆が強かったのか記憶を徐々に思い出してきますがはっきりとは思い出せません。

なので、その存在を確かめるべく早紀達は動き出しますが、いないはずの瞬を探そうとしていることが大人達にばれ、守が不浄猫に狙われてしまいます。

それに気づいた守は逃亡すると、真理亜も一緒に駆け落ちをします。

町の人には友達を想い死んだと伝えられますが、後々の物語でこれがきっかけで多くの人が死ぬことに…。

 

物語後半では早紀と覚が大人になった姿を見せる

瞬を失い、守と真理亜がいなくなることでだいぶ寂しくなってしまったが早紀と覚は無事に大人になって生活をしていました。

ある日、化けネズミが人間の作ったルールを破ります。

そのルールとは他コロニーに攻撃する時は申請しなくてはならないという決まりです。

化けネズミのいざこざなんてよくあることのような気がしますが、これが悲劇の始まりとなります。

野弧丸という化けネズミが呪力の力を手に入れたことで世界征服を策略していたのです。

真理亜と守に子供が生まれおり、どういう経緯で化けネズミの元にいたのかはわかりませんが、化けネズミに育てられ自身も化けネズミと思い込んでいる人間として野弧丸の元にいたのです。

「呪力なら皆持っていると思ったそこの君!」

新世界での管理された呪力と管理されていない呪力ではまるで怖さが違います。

要するに愧死機構攻撃抑制が人間に対して働かない、歩く核兵器が誕生したわけです。

※同族を化けネズミだと思っているので化けネズミには効きます。

ちなみにどうして子供を化けネズミにとられたんでしょうか?

真理亜と守が生きていたら絶対にとられるようなことはしないですよね。

もしかしたら、不慮の事故で死んだか化けネズミに殺されたんでしょうか…。

ちなみに小説の冒頭で

もし真理亜が生まれてこなかったとしたら、結果的にあれほど大勢の人が命を落とすこともなかったはずだから・・・

とあったので

個人的には守が死に、精神的に不安定になった真理亜が悪鬼になるストーリーかと思ってましたが、まさかの子供とは驚きです。長編小説のなせる業ですね。というか子供は純粋だから罪は無いってところが辛いところです。

そんな殺戮の天使にかかれば鏑木 肆星日野 光風という暗示がなければ一人で世界征服とか割と本気で可能なレベルの呪力使いも簡単に殺されてしまいます。

でもさすがの最強の呪力使いというだけあって正攻法ではいかず野弧丸が策を練って倒すのですが、裏の裏まで読む策士っぷりがすごかったです。

日野は完全に油断した感じでしたがそもそもクレイジーキャラすぎて「こいつ業魔なんじゃね?」と疑いの目を向けたくなります…。

ちなみに鏑木は本気を出したら地球を割れるらしいです(白目)

ドラゴンボールのドラフト会議があれば間違いなく選ばれますね(笑)

※呪力の原理は、恒星のエネルギーを利用しているというものと、人間の脳を介して量子力学的な現象をコントロールしているという、二つの説が提唱されているようです。

呪力の原理がいまいち理解できずにいるのですが、設定を読んだらなるほどと言っておきましょう。

この辺はSFなので…リアリティがあれば問題ありません(ドン!)

物語はクライマックスを迎えて人類の存亡をかけた戦いが始まる…

悪鬼と勘違いされた少年を倒すべく早紀達はサイコバスターと言われる細菌兵器を求め東京へ旅立ちます。

東京の地下洞窟の描写はとりあえず不気味で不快な感じでこういう描写は貴志祐介らしさが出ています。

何人か犠牲者を出しつつもサイコバスターという悪鬼を倒す為の秘密兵器を手に入れます。

そして、守ジュニアにサイコバスターを使って「やったか?!」となりますが…やはりお約束の展開が待ち受けてました。サイコバスターを使った瞬間に、早紀が呪力で燃やしてしまい無効化してしまいます。

刹那、少年と特に覚に対して攻撃抑制が働いてしまいます。

仲間をもう失いたくない気持ちが強くでてしまったようですが早紀は強靭なメンタルを持っていると言われているのでメンタルの強さはこの辺は関係ないんだなぁと思いました。

最終的には早紀の中にいる瞬からヒントをもらい愧死機構を応用した作戦を実行します。

まず奇狼丸という仲間の化けネズミをフードを深く被り人間に見立てることで少年に迎え撃ちさせます。

そして案の定、瞬殺されると素早くフードを脱ぎ化けネズミの姿を見せると少年は同族を殺したと認識し、愧死機構よりそのまま死んでしまいます。

早紀の中に出てくる瞬は度々でてきますが早紀が作り出したイメージなのか、瞬の呪力によって早紀の中に意識を入れたのか分かりませんが、どちらにせよ良いとこで助言してくれるので守護霊みたいでした。あるいはもう一人の僕でした。

現実では一緒になれませんでしたが精神世界では一緒になれたみたいでほっこりしました。

最後には野弧丸の策略は破れてしまい、裁判にかけられて半永久的に苦痛を与え続ける刑という

無間地獄の刑に処されます。

しかし、しばらくすると心優しい早紀により安楽死させられます。

裁判の時に野弧丸は「私たちは人間だ!」と言い放ちますがどうやら本当に人間らしく呪力を持たない人と持つ人の差別化をはかるため呪力を持たない人を呪力により遺伝子をかえられたようなので差別化の歴史を見てるようで深く考えさせられます。

姿を醜く変え愧死機構を働かないようにしたみたいですが、人権を無視した倫理観のかけらもない恐ろしいことですよね。

醜い生き物に対してなら残酷にもなれる人間こそ真の悪鬼のような気がします…。

最後に…

小説の最後に悪鬼と業魔を防ぐ手段として攻撃抑制愧死機構がありますが硬直的で不自然な解決方だったのではないかと言われています。

実際にそれのおかげで悪鬼等がでるのは稀になったようですが悪鬼がでてしまった時の対処方がほとんどなくなってしまいます。

僕が考えとしては呪力を持った人でも目に見えない攻撃は防げないようですし攻撃抑制愧死機構が無くても、対悪鬼&業魔特殊部隊を呪力を持った人で作ってやればいいんじゃないかと思います。

(呪力が無くともいいですがあったに越したことはないかな)

それだと事故が起こってから対処する形になってしまいますが…。

実際に警察だって殺人が起きてから動きますしそこはしょうがないと。

新世界よりは呪力によるユートピアができたと思いきやとんだディストピアでしたね。

ここまで緻密に練り上げた構想にはもうすごいとしか言いようがないです。

長々となりましたがまだまだ書き足りないくらいです…。

しっかり書こうとするとあと1000ページくらいは必要なのでこの辺にしておきましょう!

とにかくすごく面白かったです!

アニメもあるみたいですが長編だけあってアニメだと収まりきらない部分が…

アニメのエンディングテーマは好きです。

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